• Ep.930 TikTokの生みの親が送る刺客、「Seedance 2.0」の衝撃(2026年2月12日配信)
    Feb 11 2026

    昨日、2026年2月10日、TikTokの親会社である中国ByteDanceから、新たな動画生成AI「Seedance 2.0(シーダンス・ニーテンゼロ)」が正式にリリースされました。これを受けて、テック業界、特にクリエイターエコノミー界隈がざわついています。


    これまで動画生成AIの王者といえば、圧倒的な映像美を誇るOpenAIの「Sora」でした。しかし、今回登場したSeedanceは、全く異なるアプローチでその座を奪おうとしています。Soraが「映画のようなリアリティ」や「長尺のストーリーテリング」を追求しているのに対し、Seedanceが武器にしているのは「圧倒的な生成スピード」と「コントロールのしやすさ」です。


    具体的には、ByteDance自社のクラウド基盤である「Volcengine」をフル活用することで、他社モデルでは数分かかるような動画生成を、わずか数秒から十数秒で完了させることができます。これは、TikTokのような「短い動画を次々と消費・投稿する」プラットフォームの文化に見事にフィットした設計です。


    また、Seedanceという名前の由来にもなっている「Seed(シード=種)」の概念もユニークです。ユーザーは、気に入った動画の「生成の種(プロンプトや構図のデータ)」を共有することができ、他のユーザーはその種を元に、自分の好みに合わせてリミックス動画を一瞬で作ることができます。これはまさに、TikTokが音楽やダンスで作り上げた「模倣とアレンジの文化」を、AI生成動画の世界に持ち込む試みと言えるでしょう。


    競合であるOpenAIのSora 2が「プロの映像作家のためのスタジオ」を目指しているとすれば、ByteDanceのSeedanceは「全てのスマホユーザーをクリエイターにする魔法の杖」を目指している。そんな対照的な戦略が鮮明になったニュースでした。

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  • Ep.929 伝説のVC、ついに日本上陸──「Shizuku AI」が描く“AIの初音ミク”構想(2026年2月12日配信)
    Feb 11 2026

    シリコンバレーの歴史が、ついに日本のスタートアップと交差しました。昨日、2026年2月9日、米ベンチャーキャピタルの雄、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)が、創業わずか半年の日本発スタートアップ「Shizuku AI」への出資を発表しました。a16zが日本関連企業に投資するのはこれが初めてであり、評価額は異例の7500万ドル、日本円にして約120億円に達しています。


    なぜ、世界中のAI企業が列をなして求愛するa16zが、日本の「Shizuku AI」を選んだのでしょうか。その理由は、独自の技術と日本の「お家芸」の融合にあります。


    Shizuku AIの最大の武器は、小平暁雄CEOが開発した「StreamDiffusion」という技術です。これまでの画像生成AIは、一枚の絵を作るのに数秒の待ち時間が必要でしたが、この技術は1秒間に100枚以上の画像をリアルタイムで生成できます。これにより、AIキャラクターはユーザーの言葉に瞬時に反応し、まるで生きているかのように滑らかに動き続けることが可能になります。


    a16zは以前から「AIコンパニオン」こそが次なるSNSになると提唱してきました。テキストだけのチャットボットではなく、表情豊かに動き、ユーザーの人生に寄り添うパートナーです。Shizuku AIは、この技術的基盤に加え、日本が得意とする「愛されるキャラクター作り」のノウハウを持っています。目指すのは、いわば「自律的に思考し、会話する初音ミク」です。


    今回の出資には、QuoraのCEOやDeNAも参加しており、調達した資金は専用半導体の確保や、日本のトップクリエイターとの連携に充てられます。日本のアニメ・ゲーム文化が、シリコンバレーの資本と最新技術を得て、世界最強の「AIエンタメ」として輸出される──そんな未来が現実味を帯びてきました。

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  • Ep.928 盟主交代の瞬間──Appleを追い抜くNVIDIA、TSMC「3ナノ」争奪戦の行方(2026年2月12日配信)
    Feb 11 2026

    これまで長年にわたり、TSMCにとっての「最重要顧客」といえばAppleでした。しかし、今まさにその歴史が塗り替えられようとしています。日本経済新聞によると、AppleがiPhone 17向けの先端半導体確保に苦戦しており、その背景にはNVIDIAの猛烈な追い上げがあるとのことです。


    まず、お手元の資料をご覧ください。TSMCの売上構成比において、かつて主役だった「スマホ」向けが30%近くまで低下する一方で、「AI・HPC(高性能計算)」向けが50%を超えようとしています。これは単なる数字の逆転ではなく、業界のパワーバランスが完全にシフトしたことを示しています。


    2026年2月現在、Appleは今秋発売予定の「iPhone 17」シリーズ向けに、TSMCの3ナノメートルプロセス(N3P)での量産を計画しています。しかし、ここで競合するのがNVIDIAの次世代AIチップ「Rubin」です。Rubinもまた、同じく3ナノプロセスを使用し、さらに製造工程で非常に手のかかる「CoWoS」というパッケージング技術を大量に必要とします。


    NVIDIAのジェンスン・ファンCEOは、足繁く台湾を訪れ、TSMCとの関係を「運命共同体」とまで表現して強固なサプライチェーンを築き上げました。一方、Appleのティム・クックCEOは決算説明会で供給制約を認める異例の発言を行っています。かつてAppleは、巨額の投資と引き換えに最先端ラインを独占することが常でしたが、一個数百万円で飛ぶように売れるAIチップを大量に注文するNVIDIAに対し、もはや以前ほどの「優先権」を行使できなくなっているのです。


    この争奪戦は、私たち消費者の手元に届くiPhoneの生産数に影響するだけでなく、AIインフラの拡充スピードそのものを左右します。TSMCの生産能力がボトルネックとなり、スマホとAI、どちらの進化を優先するのかという究極の選択が迫られていると言えるでしょう。

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  • Ep.927 PalantirとAirbus、蜜月は続く──“空のOS”Skywiseが挑む「増産」と「AI」の壁(2026年2月12日配信)
    Feb 11 2026

    航空宇宙業界とIT業界の双方にとって、非常に象徴的なニュースが入ってきました。2026年2月10日、データ解析の巨人Palantirと、航空機製造のAirbusが、戦略的提携の延長を発表しました。


    この二社の関係は2017年に遡ります。当時、Airbusは新型機A350の増産に苦しんでいましたが、Palantirの技術を導入することで製造現場のデータを統合し、ボトルネックを劇的に解消したという「伝説」があります。それから約10年、両社が作り上げたプラットフォーム「Skywise」は、今や数千機の航空機と数百の航空会社を繋ぐ、業界のデファクトスタンダード(事実上の標準)に成長しました。


    今回の契約延長のポイントは、単なる「更新」ではありません。「生成AIの実装」が主役です。発表によると、新しいSkywiseにはPalantirの最新AI基盤である「AIP」が深く組み込まれます。これにより、エンジニアや運航管理者は、複雑なクエリを書くことなく、自然言語で「なぜ部品Aの納入が遅れているのか?」「代替ルートを使った場合のコストへの影響は?」といった問いを投げかけ、即座にシミュレーション結果を得ることができるようになります。


    なぜ今、これが必要なのでしょうか? Web検索で航空業界の現状を紐解くと、その背景には強烈な「増産圧力(Ramp-up)」があります。Airbusは現在、主力機であるA320neoファミリーの月産数を、かつてない水準(月産75機など)まで引き上げようとしています。しかし、エンジンや電子部品のサプライチェーンは世界的な混乱の中にあり、一つの小さな部品不足が巨大な工場のラインを止めてしまうリスクが常につきまとっています。


    従来のSkywiseは「データを見える化」するツールでしたが、これからのSkywiseはAIPを通じて「問題を予知し、解決策を提示する」ツールへと進化します。例えば、あるサプライヤーの工場でストライキの予兆があれば、AIが即座に生産計画への影響を計算し、別の調達先を提案するといった具合です。


    AirbusのCEOギヨーム・フォーリ氏は以前から「デジタル変革なくして増産なし」と語っていましたが、今回の提携延長は、まさにその言葉を裏付けるものです。「空飛ぶデータセンター」とも呼ばれる現代の航空機を作るには、それを作る工場自体もまた、AIによって高度に知能化される必要があるのです。

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  • Ep.926 PFNとSnowflake、最強のタッグ──金融特化AI「PLaMo」がデータクラウドに降臨(2026年2月12日配信)
    Feb 11 2026

    日本のAI開発をリードするPreferred Networks(PFN)と、データクラウドの巨人Snowflakeが、非常に戦略的な提携を発表しました。本日、2026年2月10日より、PFNの自社開発LLM「PLaMo」シリーズが、Snowflakeマーケットプレイス上で利用可能になりました。


    このニュースの最大のインパクトは、「データのある場所で、最強の国産AIが動く」という点にあります。多くの企業、特に金融機関は、顧客情報や取引履歴といった機密性の高いデータをSnowflake上で管理していますが、これまではそのデータをAIで分析しようとすると、一度データを外部のAIサーバーに転送する必要があり、セキュリティ上の懸念がありました。しかし今回、PLaMoがSnowflakeの環境内で直接動くようになったことで、データ移動に伴う情報漏洩リスクをゼロにしながら、高度なAI分析が可能になったのです。


    特に注目すべきは、今回提供されるラインナップの中に「金融特化型PLaMo」が含まれていることです。これは、日本の複雑な金融規制や専門用語を叩き込まれたプロフェッショナルなAIです。例えば、銀行の融資部門が過去の膨大な稟議書を要約させたり、コンプライアンス部門が法規制に照らして文書をチェックさせたりといった作業を、安全なクラウドの中で完結させることができます。


    コスト面でも大きなメリットがあります。通常、これだけの高性能なAIを自社で動かそうとすると、数千万円クラスのGPUサーバーを調達し、エンジニアが構築する必要があります。しかし今回の仕組みでは、Snowflakeユーザーであれば「1時間あたり約1.5ドルから2ドル」という従量課金で、ボタン一つで利用を開始できます。これは、AI導入の初期投資という巨大な壁を取り払う画期的なモデルと言えるでしょう。


    PFNは今後、3月以降に「翻訳特化型」やさらに高性能な次世代モデルも投入する計画です。「国産の安心感」と「世界標準のデータ基盤」の融合は、日本のエンタープライズAI、特に堅実さが求められる金融業界のDXを一気に加速させる起爆剤になりそうです。

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  • Ep.925 日立と東大、AIで「貿易戦争」を予知──サプライチェーンを守る“地政学テック”の最前線(2026年2月12日配信)
    Feb 11 2026

    本日、2026年2月10日の日本経済新聞が報じた、非常に興味深い技術ニュースについて解説します。日立製作所と東京大学がタッグを組み、世界中の「関税」や「貿易規制」の発動をAIで予知するシステムを開発したという話題です。


    近年、サプライチェーンの寸断は企業にとって最大のリスク要因となっていますが、地震や台風といった自然災害と違い、政治的な決定による関税の引き上げや輸出規制は、予兆を掴むのが非常に難しいとされてきました。しかし、今回発表されたシステムは、まさにその「政治の天気予報」を行おうとするものです。


    このシステムの凄いところは、単にニュースを翻訳して読むだけではない点です。世界200カ国・80言語のニュース記事や政府統計を生成AIが読み込み、「Tariff(関税)」や「Security(安全保障)」といったキーワードの出現頻度を分析します。そして、ここがポイントなのですが、例えば米国の「通商拡大法232条」や「国際緊急経済権限法(IEEPA)」といった、関税発動の根拠となる法律が求める「条件」が満たされつつあるかどうかを、AIが法的なロジックに照らし合わせて判定するのです。


    さらに、このシステムは「どこで何が起きるか」だけでなく、「自社にどれだけの被害が出るか」までを予測します。通常、大手メーカーであっても、直接取引のない二次、三次のサプライヤーがどこに工場を持っているかまでは把握しきれていないことが多いものです。しかし、このAIは公開情報から部品の型番や企業情報を分析し、サプライヤーの製造拠点を「緯度・経度」レベルで高精度に推定します。これにより、「ある国で関税が発動された場合、供給網の深い部分にいるあの部品メーカーが影響を受け、結果として自社の製造コストがこれだけ上がる」といったシミュレーションが可能になるのです。


    Web検索で周辺情報を補足すると、現在「経済安全保障」をテーマにしたテック企業、いわゆる「エコノミック・セキュリティ・テック」への注目が世界的に高まっています。米国のResilincやEverstream Analyticsといった企業が先行していますが、日立と東大のアプローチは「法学・政治学の知見」をAIに組み込むことで、より高度な「予知」を目指している点がユニークです。


    日立はこのシステムを、まずは2026年度からグループ内の調達部門で試験運用し、2029年頃を目処に外部への販売を検討しているとのことです。地政学リスクが常態化する中、こうした「予知能力」を持つことは、経営の安定化にとって必須の装備となっていくでしょう。

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  • Ep.924 マイクロソフト、悪夢の「連続格下げ」──AI投資の“1150億ドルの請求書”に震えるウォール街(2026年2月12日配信)
    Feb 11 2026

    「AIの王者」として君臨してきたマイクロソフトに、冷たい風が吹き荒れています。2月9日、ウォール街で有力視される調査会社Melius Researchが、同社の投資判断を「買い」から「中立(Hold)」へと引き下げました。


    事態が深刻なのは、これが単発のネガティブニュースではないからです。実は先週、投資銀行のStifelも同様の格下げを行っており、わずか一週間のうちに二つの主要機関がマイクロソフトに対して「待った」をかけたことになります。市場では「AIバブルの終わりの始まりではないか」という不安の声さえ聞こえ始めています。


    Web検索とアナリストレポートを分析すると、格下げの理由は明確です。それは「投資とリターンの不均衡」です。Meliusの著名アナリスト、ベン・ライツ氏はレポートの中で、マイクロソフトが2026年に計画している設備投資(CapEx)が1,150億ドル、日本円にして約17兆円という天文学的な数字に達することに警鐘を鳴らしました。


    これほどの巨額を投じる一方で、肝心の収益源となるはずの「Copilot」の普及は遅々として進んでいません。ライツ氏は「3年間の派手な宣伝を経て、有料ユーザーがわずか1,500万人にとどまっていることに愕然とした(Floored)」と強い言葉で失望を露わにしています。競合であるAnthropicやGoogleが次々と高性能なモデルを投入する中、マイクロソフト製品の優位性が薄れ、「高いお金を払ってまでCopilotを使う意味があるのか?」と企業が再考し始めているのです。


    さらにショッキングなデータも提示されました。株価収益率(PER)という指標で見ると、現在のマイクロソフトは、かつてのハイテクの覇者であり現在は安定成長株と見なされている「IBM」よりも割安な水準で取引されています。これは市場が、マイクロソフトを「急成長するAI企業」としてではなく、「重厚長大なインフラ企業」として再評価し始めていることを示唆しています。


    ライツ氏は現状を「Lose-Lose(どちらに転んでも負け)」の状況だと指摘します。投資を止めればGoogleに負け、投資を続ければ利益が圧迫される。サティア・ナデラCEOは、この難局をどう舵取りするのか。次回の決算発表は、これまでになく厳しいものになりそうです。

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  • Ep.923 OpenClawが招く“野生のエージェント”時代──AIが勝手に「キャンセル手続き」をする日(2026年2月12日配信)
    Feb 11 2026

    今、シリコンバレーの技術者たちの間で「OpenClaw(オープンクロウ)」という言葉が、期待と少しの恐怖をまじえて囁かれています。The Informationが2026年2月10日に報じた記事は、私たち消費者がAIを使ってWeb上のあらゆる面倒事から解放される一方で、インターネットそのものが「野生のボット」で溢れかえる奇妙な時代の到来を告げています。


    Web検索と記事の内容を紐解くと、OpenClawとは特定の製品名というよりは、OpenAIやAnthropicがリリースした強力なモデルを、実際のWebサイト操作(クリックや入力)に直結させるためのオープンソースの仕組みを指します。これまでは技術的な壁がありましたが、この「爪(Claw)」を手に入れたことで、一般のユーザーでも「ジムの解約手続きをしておいて」「一番安い航空券を見つけて予約まで済ませて」といった指示を、自分のPC上のAIに実行させることが可能になりました。


    記事が「Wild and Weird(野生的で奇妙)」と表現しているのは、その使われ方です。例えば、あるユーザーはOpenClawを使って、カスタマーサポートのチャットボットと延々と交渉させ、携帯電話料金の引き下げに成功しました。またあるユーザーは、入手困難なコンサートチケットを確保するために、何千回ものアクセスを試みるエージェントを放ちました。これらは悪意あるハッキングではなく、あくまで「個人の権利」を行使するための活動ですが、Webサイト側からすれば、人間なのかボットなのか判別がつかない大量のアクセスが押し寄せることになります。


    企業側も防衛策を練っていますが、最新のマルチモーダルAIは、人間向けに作られた画像認証(CAPTCHA)をいとも簡単に突破してしまいます。結果として、インターネットは「AIが作ったWebサイトを、AIのエージェントが見に行き、AI同士で交渉する」という、人間不在の空間になりつつあるのです。記事は、この状況を「Webの西部開拓時代」になぞらえています。


    私たちにとっては、面倒な手続きを代行してくれる頼もしい味方ですが、裏を返せば、ネット上のあらゆるサービスが「対AI」を前提とした堅苦しい仕様に変わってしまう可能性も秘めています。便利さと引き換えに、私たちはインターネットの静けさを失いつつあるのかもしれません。

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