P+D BOOKS シリーズ

小学生時代の同級生と競馬場での再会をきっかけに甦る川崎での幼児体験の記憶――。その記憶の彼方にいるおぼろげな父の像。私小説的な手法で父の実像を追い求め、人間の真実の姿を映し出した長編。

オリエントの康の遺児が、新宿で「中本」の一統と出会い、彼らと共に紀州・新宮へ舞い戻る。新たな抗争の予感を湛える長編。「千年の愉楽」の続編ともいえる未完作。「週刊ポスト」にて連載中に絶筆した。

美しく奔放だった母。私の出生にまつわる何かについて母が隠し続けた秘密に、躊躇しながらも探さずにはいられない筆者。その結果みたものは……。亡き母への愛と鎮魂をみごとに描破した菊池寛賞受賞作。

太平洋戦争中、九大に通う文学青年たちは学徒出陣を目前にしていた。文学的揺籃期に恩師・伊東静雄から受けた薫陶や学生仲間との交流を日記スタイルで描いた“第三の新人”の代表的作家・庄野潤三による青春群像作。

北欧の都会にタピスリの研究に訪れた支倉冬子。だが、ある日、忽然と消息を絶つ。生の回復を求める魂の遍歴を精緻に描き、辻邦生の“死生観“が見事に結実した初期の金字塔的作品。「創作ノート抄」も併録。

「男の花道」「男の十字路」「男の旅路」「オールドボーイ」といった“男シリーズ”のほか、単行本未収録の「赤い靴」「青年」「蜘蛛太夫」「道路の虹」などをまとめた、“無頼派作家”最晩年の短編小説集。

文壇きっての愛棋家・山口瞳が、斯界の巨星・大山康晴から中原誠、米長邦雄ら第一線棋士との真剣対局“十番勝負”に挑んだ１９７２年の自戦記。軽妙な文章で綴られながらも、棋士の人間的魅力を描いて読み応え充分。

国立でモツ焼き屋「兆治」を営む藤野英治。輝くような青春を送り、挫折と再生を経て現在に至っている。かつての恋人、さよの転落を耳にするが、妻との生活の中で何もできない自分と、振り払えない想いに挟まれていく

熟年主人公の「私」は大阪府出身ながら生家は郊外、家庭を持ってからは東京暮らしとあって、大阪の街について、実はよく知らない。そこで「私」は妻の従弟「悦郎さん」に昔日の大阪を語って貰おうと会いに出かける。

庄野家の穏やかな日常を描く日記文学的作品。孫娘の成長を中心にしながら、三世代が集う大家族の賑々しさ、ご近所さんとの交流など、「古き良き時代」を感じさせてくれる佳作。「フーちゃん三部作」第２弾。

もうすぐ結婚５０周年を迎える夫婦の飾らない日々を綴った作品。孫たちの成長、ご近所さんが届けてくれる季節の風物など、身のまわりの何気ない日常を、まるで花を育てるように丹念に描く、まさに庄野潤三の世界。

晩年を迎えた作者夫婦の日常を、テンポよく場面を転換しながら綴る日記エッセイ風長編小説。「胚芽パン」「玄関の花」「夏の思い出」などきわめてささやかな話題が、庄野作品らしい温かいタッチで丹念に描かれる。

地球を侵略しようとするクトゥルーの神々と、それを阻止しようとする神州・日本を中心とする地球古来の神々との闘い、そして神々の圧倒的な力の前に滅びて行こうとする人類の危難を描いた大河小説の第１弾。

妖怪たちの巣窟に踏み込んだルポライターの安西は、眼前に繰りひろげられる、恐怖と苦悶、戦慄と残虐にみちた魔性たちの異様な饗宴に圧倒された。そして、人間界はもはや風前の灯の危機にさらされていることを知る。

異例の才能を持ちながら埋もれていった亡命ロシア人の女流画家・マーシャの内的彷徨と、悲痛な生涯を、彼女が遺した日記や手紙から辿り、清冽な筆致で描いた辻邦生の処女長編作。第４回近代文学賞受賞作

海光る３月。十五になったフサは生まれ育った町をあとにした。肉体の目覚めとともに恋を知り、子を孕み、母となって宿命の地に根をおろすフサ。が、貧しくも幸福な日々は、夫の死によって突然に断ち切られた……。

人生というばくちに敗れ、はずれ者として死んでいく男・虫喰仙次に対する深い親愛と共感を綴る表題作ほか、元海軍司令の父に寄せる想いを描く作品「復活」「観音」など筆者の自伝的な短編７篇を収録。

カミさんと別れたのをきっかけに「くだらないことをしてやろう」と思ったナルコレプシー（睡眠発作症）の男が、ラスヴェガスを皮切りにニース、ロンドン、サイパン、カイロなどの賭博場を転々と放浪する痛快な一冊。

一度は愛した女性を自殺に追いやってしまった男。東京での暮らしと職を捨て、北海道の寒村で贖罪の日々を送っていたが、シリアへの旅をきっかけに、止まっていた時間が少しずつ動き出す――。傑作長編小説の上巻。

友人の誘いで訪れたシリアで、砂漠や遺跡を目の当たりにし、かたくなな心に変化が生まれた矢口忍。どことなくかつての恋人を彷彿とさせる鬼塚しのぶと出会い、生きる意味を捉え直していく――。