Ep.925 日立と東大、AIで「貿易戦争」を予知──サプライチェーンを守る“地政学テック”の最前線(2026年2月12日配信)
Failed to add items
Add to basket failed.
Add to Wish List failed.
Remove from Wish List failed.
Follow podcast failed
Unfollow podcast failed
-
Narrated by:
-
By:
About this listen
本日、2026年2月10日の日本経済新聞が報じた、非常に興味深い技術ニュースについて解説します。日立製作所と東京大学がタッグを組み、世界中の「関税」や「貿易規制」の発動をAIで予知するシステムを開発したという話題です。
近年、サプライチェーンの寸断は企業にとって最大のリスク要因となっていますが、地震や台風といった自然災害と違い、政治的な決定による関税の引き上げや輸出規制は、予兆を掴むのが非常に難しいとされてきました。しかし、今回発表されたシステムは、まさにその「政治の天気予報」を行おうとするものです。
このシステムの凄いところは、単にニュースを翻訳して読むだけではない点です。世界200カ国・80言語のニュース記事や政府統計を生成AIが読み込み、「Tariff(関税)」や「Security(安全保障)」といったキーワードの出現頻度を分析します。そして、ここがポイントなのですが、例えば米国の「通商拡大法232条」や「国際緊急経済権限法(IEEPA)」といった、関税発動の根拠となる法律が求める「条件」が満たされつつあるかどうかを、AIが法的なロジックに照らし合わせて判定するのです。
さらに、このシステムは「どこで何が起きるか」だけでなく、「自社にどれだけの被害が出るか」までを予測します。通常、大手メーカーであっても、直接取引のない二次、三次のサプライヤーがどこに工場を持っているかまでは把握しきれていないことが多いものです。しかし、このAIは公開情報から部品の型番や企業情報を分析し、サプライヤーの製造拠点を「緯度・経度」レベルで高精度に推定します。これにより、「ある国で関税が発動された場合、供給網の深い部分にいるあの部品メーカーが影響を受け、結果として自社の製造コストがこれだけ上がる」といったシミュレーションが可能になるのです。
Web検索で周辺情報を補足すると、現在「経済安全保障」をテーマにしたテック企業、いわゆる「エコノミック・セキュリティ・テック」への注目が世界的に高まっています。米国のResilincやEverstream Analyticsといった企業が先行していますが、日立と東大のアプローチは「法学・政治学の知見」をAIに組み込むことで、より高度な「予知」を目指している点がユニークです。
日立はこのシステムを、まずは2026年度からグループ内の調達部門で試験運用し、2029年頃を目処に外部への販売を検討しているとのことです。地政学リスクが常態化する中、こうした「予知能力」を持つことは、経営の安定化にとって必須の装備となっていくでしょう。