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正義のつもりの“袋叩き”が、社会を後退させる

正義のつもりの“袋叩き”が、社会を後退させる

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――田中慎一朗校長が語る、SNS動画拡散と「プロセスの保障」年末年始、SNS上で中高生による暴力動画が相次いで拡散され、大きな波紋を呼びました。 激しい非難、投稿者の特定、住所のさらけ出し――。 「悪いことをしたのだから当然だ」という世論が渦巻く中、熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長は、 「その『正義』のあり方が、実はさらなる悲劇を生んでいないか」と静かに問いかけます。 聞き手は、RKKの江上浩子です。🔶 「事実(Fact)」は一つ、「真実(Truth)」は人の数だけある 事件が起きると、私たちは映し出された映像だけを見て、すべてを分かったつもりになりがちです。しかし田中校長は、物事には二つの側面があると言います。「警察が調べるのは、いつ、どこで、誰が何をしたかという『事実』です。 しかし、その背景にある文脈やストーリーといった『真実』は、そこにいた人の数だけ存在します」映像に映っていない場所で、何が起きていたのか。 ▶ なぜその行為に至ったのかという背景 ▶ その場にいた他の子たちは何を思っていたのか ▶ 映像を拡散させた側の意図は何だったのか「目に見える断片だけで『徹底的に懲らしめろ』と袋叩きにすることは、果たして正義なのか。その攻撃自体が、また別の暴力になってはいないでしょうか」🔶 「手続き保障」こそが、私たちが安心して生きるための砦 田中校長が強調するのは、未成年であっても「法的な手続き」を正しく経ることの重要性です。「やったことに対しては、司法の場で、未成年であれば少年法などの手続きに基づき、きちんとした処遇が決定されるべきです。それが法治国家のルールです」SNSによる私刑(個人の特定や個人情報の晒し)は、この「手続き」を無視した行為です。 ▶ 一方的な決めつけは、弁明や事実確認の機会を奪う ▶ 晒された側が世の中に恨みを持ち、根本的な解決から遠ざかる ▶ 「ばれないようにやる」という、より陰湿な思考を植え付ける「『手続き保障』があるからこそ、私たちは安心して生きていけます。 それを無視して誰かを攻撃することは、回り回って自分たちの首を絞め、世の中を不安定にしていくことにつながるんです」🔶 心理学「プロセスワーク」から見る、役割(ロール)の入れ替わり 田中校長は今、大学で「紛争解決学」を学ぶ中で、心理学者アーノルド・ミンデルが提唱した「プロセスワーク」という考え方に注目しています。 そこで語られるのは、「加害者」や「被害者」という役割(ロール)は、固定されたものではないということです。「いじめている子が、別の場所では誰かにいじめられているかもしれない。 家庭での虐待や、社会からの抑圧に苦しんでいるかもしれない。 そう考えると、動画で加害者に見える子も、ある側面では『社会からいじめられている被害者』の役割を担っていることがあるんです」役割はぐるぐると動き回ります。 ▶ 加害者が、SNSのバッシングによって過剰な被害者になる ▶ 正義を振りかざす視聴者が、無自覚に加害者へと転じる ▶ この連鎖が続く限り、問題の根本は解決せず、悲劇は繰り返される「その子個人の問題として切り捨て、『自分の側には問題がない』と断定してしまうのは非常に危険です」🔶 「犯人探し」ではなく「構造」に目を向ける 事件が起きるたびに、「家庭教育が悪い」「学校は何をしていた」と、誰かを責めることで決着をつけようとする風潮があります。 しかし、田中校長は「誰かに問題を落とし込む(押し付ける)こと」をやめるべきだと訴えます。「なぜ子どもたちが動画を拡散させてしまうのか。なぜ暴力を止めることができなかったのか。 その『構造』そのものに、みんなで関心を持つべきなんです」▶ 特定の個人を責めて終わらせない ▶ 「モヤモヤ」をみんなで抱えながら、解決の姿勢を探る ▶ 大人が自分の襟を正し、子どもにどんな社会を見せるべきか考える「子どもは大人の背中を見ています。 大人がSNSで誰かを袋叩きにする姿を見せながら、子どもに『暴力を振るうな』『いじめをするな』と言っても、説得力はありません」教育の現場...
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